速読と勉強法を用いた書籍読書術の実践と本の書評レビュー

読書家の長尾さん

背水の陣が意志力を高める

意志力を高める『スタンフォードの自分を変える教室』実践編 連載

背水の陣が意志力を高める

投稿日:

ひどい目にあわせてください、奪い取ってしまってください……背水の陣の覚悟です!

読書家の長尾さん
第32回『スタンフォードの自分を変える教室』の内容を実践していく連載、はじめるよ!

悪い習慣を捨てて良い習慣を継続する「自分を変える」本の実践記録を連載しているよ

今回の意志力を高めるトレーニングはちょっと覚悟がいるぞ!

今回の見どころ


読書家の長尾さん
今回の記事でいよいよこのブログも100記事目

おめでとう
ようやっとスタート地点に立ったカンジやね

読書家の長尾さん
前のWeb制作技術を書いてたブログを更新しなくなってから5年くらいブランクがあったけど、段々とブログ運営のカンも取り戻しはじめたカンジがする

もうよっぽどのことが無い限りは更新止めそうにないな

読書家の長尾さん
この連載を通して意志力を高めることは成功しつつあるからね

別テーマのサイトをもう1本作る構想とか音声コンテンツ作る計画もあるもんな

読書家の長尾さん
そっちをやりだしたら記事の更新は毎日じゃなくなるかもね

まぁこっちで記事を書かんでも月~金は継続して何かやることができそうやな

読書家の長尾さん
そうだね そしてこのブログが今後も僕の提供するコンテンツ群の中心になっていくので、何か実践するたびに更新していくけどね

何にせよまずはこの連載を書ききってからやな

読書家の長尾さん
というわけでそろそろ今回も勉強をはじめようか

「割引率」が10年後の成功を決める

前回の記事『10分待て!意志力を高めるまで!』で紹介した「遅延による価値割引」を思い出してほしい

読書家の長尾さん
「報酬を得るために長く待たなければならない」ほど、「その報酬の価値は下がる」という考えのことだったよね

報酬を得るまでに時間がかかる場合にどれくらい価値が下がるかの割引率は、実は人によって異なっている

ぜったい値下げしてくれない高級店のように、将来の報酬に対する価値の割引率がメチャクチャ低い人たちもいる

割引率が低いってことは「価値が高いまま意識できる」ということ

この人たちは将来大きな報酬を手に入れることを常に念頭に置いていて、そのために待つことができる人たちなんだ

実は有名な心理学の実験から、遅延による価値の割引率が低い人たちは将来的に成功しやすいということが分かっている

マシュマロ・テスト

1960年代の後半にスタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルが行った『マシュマロ・テスト』と呼ばれる心理学の実験

読書家の長尾さん
これは非常に有名なので知っている人もいるんじゃないかな

この実験では4歳の子供たちにマシュマロをすぐに1個もらうか、15分待って2個もらうか選ばせた

前回の記事『10分待て!意志力を高めるまで!』に出てきたチンパンジー対人間の意志力勝負は、この実験の手法を応用したそうだよ

その内容はというと、担当者が実験の説明をしたあと、マシュマロ1個とベルを置いて部屋を出て子供ひとりにする

担当者が戻ってくるまで待っていられたら、マシュマロを2個もらえる

もし待てなければ、ベルを鳴らしてから食べてもいいというルールになっている

ほとんどの子どもたちはマシュマロをじーっと見つめ、「どんな味がするのかなぁ」と想像していたそうだ

読書家の長尾さん
前回の記事で学んだのは「報酬が視界に入らないようにする」だったよね
つまりこれは逆効果ってわけだ

案の定そういう子たちはすぐに降参して目の前のマシュマロを食べてしまった

逆に最後まで待てた子供たちの多くは、やはりマシュマロを見ないようにしていたそうだ

前髪で目を覆って隠したり、マシュマロはガン見するけどもベルは手の届かないところへやってしまう子たちなど、手法は様々

中にはマシュマロを食べずに「舐めるだけ」で誤魔化した子もいたそうで、著者は「きっとこの子は将来大物の政治家になる」と評している

読書家の長尾さん
たぶんアメリカ式のすごい皮肉なんじゃないかな

マシュマロ・テストの10年後

実はこのセクションの本題はマシュマロ・テストそのものじゃなく、その10年後の話

4歳児がマシュマロ・テストでどのくらい待てたかということが、その子どもの将来の学業成績や社会的な成功に関連していることが分かったんだ

いちばん長く待てた子供たちは10年後どんな若者になっていたかというと、人気者で成績優秀、ストレスにもうまく対処できる人間になっていたそうだ

学力テストのスコアは高く、前頭前皮質の機能を測定する神経心理学のテストでも良い成績になっていたらしい

脳の中のもうひとりの自分を利用して意志力を高める』を読んだ人なら覚えていると思うけど、前頭前皮質は自己コントロールを司る脳の領域だ

読書家の長尾さん
前頭前皮質の機能が高いということは、つまり自制心が強くて意志力が高い人間ということだね

割引率が高い人たちはどうなるか

いっぽうで将来の報酬に対する割引率が高い人たちも、もちろん存在する

読書家の長尾さん
割引率が高いということは、将来の報酬の価値を低く意識しているということ

最大90%オフまで値下げしてでもわずかな現金収入を狙う閉店セールみたいに、将来を売りとばして目先の快楽を味わわずにはいられない人たち

こういった人たちほど自己コントロールに関して色んな問題を抱えやすくなる

  • タバコ・酒・薬物・ギャンブルなどの依存症になるリスクが高くなる
  • 老後のための貯金をほとんどしない
  • 飲酒運転や無防備な性交渉をする確率も高くなる
  • やるべきことを先延ばしにする傾向が強い
  • 時間などどうでもいいと言わんばかりに常に「いま」しか頭になく、時計をするのさえ嫌がる人も

意志力の実験:割引率を下げる

今回の課題は意志力の実験が2つある

科学的な研究や理論にもとづいて自己コントロールを強化するための実践的な戦略、意志力の実験

まず最初の課題は「将来の報酬に対する割引率を下げる」という実践

個人の割引率は幸いにして物理の不変の法則ではありません

選択についての自分の考え方を変えるだけで割引率は下げることができます

仮に私があなたに90日後に換金可能な100ドルの小切手をプレゼントしたとします

でも、私はすぐに気が変わってケチろうとします

「今日からすぐに使える50ドルの小切手と交換しませんか?」

こんな場合、ほとんどの人は交換しないでしょう

けれどもし最初に50ドルの小切手をもらっていたら、かなり待たないと換金できない100ドルの小切手と交換しないかと言われても、ほとんどの人はやはり交換しないでしょう

つまり、人は最初にもらった報酬を手放そうとしないのです

著者によると最初に「この50ドルの小切手をもらっておこう」と思った人は、目先の欲求を満たしたほうがいいと思う理由理屈を付け足そうとするそうだ

  • 「このお金があればいろいろと使える」
  • 「100ドルの小切手が90日後にちゃんと換金できるかどうかわからないしな」

逆に「100ドルの小切手をもらうことにしよう」と最初に決めた人は、欲求を満たすのを遅らせたほうがいいと思う理由理屈を付け足す

  • 「お金が2倍あれば買い物も2倍できる」
  • 「90日後だってお金が必要に決まっている」

つまりこの心理と同じで、「目先の報酬」よりも先に「将来の報酬」を考えるようにすれば、将来の報酬に対する価値を高いまま意識できるということ

何かの誘惑にかられて「目先の欲求に従いたくない!」と思ったら、こんなふうに考えてみるのはどうかと著者は提案している

STEP1. 長期的な利益に反する行動を取りたくなった場合に、「目先の快楽に負けてしまったら、あとで手に入るはずの最高の報酬をあきらめることになるのだ」と自分に言い聞かせる
STEP2. 長期的な報酬が手に入ったところを想像する──つまり自制心を発揮して我慢したおかげで手に入った成果を味わっている未来の姿を想像する
STEP3. 最後に自分に問いただす──「いっときの快楽のために、大事な目標をあきらめていいの?」

「将来の報酬」を自分に意識させる

医学部への進学を目指している女性が、Facebookのせいで授業に集中できず悩んでいた

授業中でもついFacebookが観たくなって、講義の重要な内容を聞き落とすことがたびたびあったらしい

そこでさっきの意志力の実験にあった考え方を実践してみたそうだ

思わずFacebookに見入ってしまいそうなときには、自分にこう問いかける「こんなことやってて、医者になれなくてもいいわけ?」

そう思うとそのままダラダラと時間を無駄にすることはできなくなった

それだけでも効果があったようだけど、さらに彼女はPhotoshopで手術着を着た外科医の写真に自分の顔写真を合成して、それをノートパソコンの壁紙に設定した

将来の夢がどれほど自分にとって大事かを思い出したいときや、夢を実現した自分の姿をハッキリ思い描きたいときに、いつでもその合成写真を見られるようにしたんだ

読書家の長尾さん
これは『ドーパミンで「やる力」の意志力を高める方法』の意志力の実験で紹介されていた実例と同じだね

背水の陣で「もうひとりの自分」と戦う

行動経済学者トーマス・シェリングの提唱する「プリコミットメント」という考え方がある

目標を達成するために選択肢を絞り込む必要があるという考え方で、途中で強い欲求に襲われることを事前に見通して、あらかじめ手を打って自らを拘束することを指す

おそらく訳者が日本人に分かりやすい言葉を選んだのだと思うけれど、本の中では「背水の陣」と言い換えられている

背水の陣というのは中国の故事に由来する言葉で、わざと川を世にして陣をとって味方を退却できない状況に追い込み、決死の覚悟をさせて敵を破ったというエピソードから生まれた言葉だ

あえて逃げ道をなくすことで、必死の覚悟を固めて物事にあたるときに使われる

トーマス・シェリングは2005年に核保有国間に関する冷戦理論でノーベル経済学賞を受賞していて、このプリコミットメントもそこから転用されている

たとえば軍事的な衝突があった際にすぐ苛烈な報復措置に出る方針を明確に打ち出しているような国は、報復に二の足を踏むような国に比べて「たしかにあの国ならやりかねない」という脅威を与えることができる

日本は報復措置には消極的だから、北から領空は侵犯されるわ、西から領海を侵犯されるわ……

でもロシアに対してそれをやる国ってあんまりない

うっかり行っちゃった日本のカニ漁船ですら拿捕されて長らく拘束されちゃう実例があるし

こういった世界のパワーバランスになぞらえて「理性的な自己」と「誘惑にかられた自己」も、相反する欲求のもとに戦闘状態にあるという考え方をする

行動経済学者ジョージ・エインズリーに言わせれば、「誘惑にかられた自己はまったく別の人間だと思って、相手の動きを予測し、封じ込めるべく手を打たねばならない」という

そのためには、理性的な自己も抜けめなく大胆に知恵をしぼって行動する必要がある

孫子曰く、彼を知り己を知れば百戦あやうからず

読書家の長尾さん
誘惑にかられた自己をよく観察して弱点をつかみ、理性的な自己に従わせる方法を見出そう

作家ジョナサン・フランゼンの執筆活動における背水の陣

背水の陣を意志力に活かしている実例となるエピソードをひとつ

アメリカの人気作家ジョナサン・フランゼンは、パソコンに向かっているときゲームやインターネットの誘惑にかられて気が散ってしまうのが悩みの種だった

そこで執筆活動に集中するため、彼はまず執筆と関係ない不要なプログラムをすべて削除した(ソリティアに至るまで徹底的に)

そしてワイヤレスカードを取り外し、イーサネットのポートにLANケーブルを差したまま接着剤で固定──そのままケーブルを根元からちょん切ったそうだ

とまあこれはなかなかマネできない実例だけど、こんなふうに物理的に破壊しなくても同様のことはできる

あらかじめ設定した時間内はパソコンがインターネットに接続できなくなるツールだったり、SNSにアクセスできなくするプログラムだったり

よけいなWebサイトを見ていた時間が1時間を超えるごとに課金されて、その分の金額が自動的に寄付されるというユニークなシステムも存在する

お菓子やクレジットカードなど物理的なものに対しては、鋼鉄製の頑丈な金庫で任意の時間が経過するまで開けられないというようなものまである

意志力の実験:逃げ道をなくす

科学的な研究や理論にもとづいて自己コントロールを強化するための実践的な戦略、意志力の実験

2つ目の課題は「プリコミットメントとして逃げ道をなくす」という実践

さて、あなたも誘惑にかられておかしなマネをしないよう、先に手を打っておきたくなりましたか?

今週は意識的にそれを行ってみましょう

あなたの意志力のチャレンジにおいて、次の戦略のどれかを試してみてください

3つの戦略が紹介されているので、1つずつ考えていこう

1.決めたことを実行するために手を打っておく

誘惑にかられて判断が狂うまえに、よく考えて手を打っておきましょう

たとえば、腹ペコになってファーストフードのメニューによだれを垂らしたりしないように、ヘルシーなお弁当を家から持っていきます

ジムのトレーニングに行くなら前払いをしてしまう、歯医者に行くならさっさと予約してしまうなど、できることはたくさんあります

あなたの意志力のチャレンジでは、たとえ誘惑にかられても、理性的なときに決めておいたはずの行動を取れるように、事前にどのような手を打つことができるでしょうか?

僕が今回の連載でテーマにしている意志力のチャレンジは「月~金は毎日ブログを更新する」ということなんだけど、連載にしていることとTwitterで更新通知を投げていることがこれにあたるのかな

記事に関する反応をもらえたりすると「見られてる」という意識が高まるので、ものすごーくサボりにくい

読書家の長尾さん
よく考えてみると何回か更新が止まってしまったときって、あんまり記事に対して反応がなかったような気がする

でも今は「見てます」「参考にしてます」というリプライがほぼ毎週届くし、更新通知のツイートにいいねが必ずつき、時にRTもされるようになっている

2. 望んでいることと逆のことをやりにくい状況をつくる

誘惑に負けそうなときに自分がやってしまいそうなことをやりにくくする方法を見つけましょう

たとえば、自宅やオフィスには誘惑のもとを置かないようにする

買い物に行くときはクレジットカードを持ち歩かず、予算を決めて現金を持っていく

目覚まし時計は部屋の隅に置き、アラームが鳴ったらベッドから出ないと消せないようにする

このような対策を行っても絶対に決心を曲げないとは言い切れませんが、少なくとも決心を曲げるのが面倒にはなるはずです

たとえ誘惑にかられても、そのとおりに行動するのを遅らせたり妨げたりするために、どんな工夫ができるでしょうか?

これがなかなか難しい

インターネットに接続できないと、そもそもブログが書けないからね

今のところ有効なのは『創作や作業に没頭したいのに邪魔する人がいる? これ1つだけやってください お金は使いません』で紹介してから何度か出てきたポモドーロ・テクニックかな

なんとか「記事を書く以外にやることがない」ような環境を作り出すことができればいいんだけど、今後の課題にしてみよう

また問題解決大全アイデア大全を使って考えれば何かいいアイデアが出るかもしれない

以前この2冊を使って問題解決したときの話は、『読書の力で”時間を自分の思うとおりにできない”問題を解決する』のカテゴリに登録されている記事を読んでみてね

3. 自分にモチベーションを与える

「長期的な健康や幸せに向かって歩んでいくために、アメとムチを利用するのは恥ずかしいことでも何でもない」

そう語っているのはイェール大学の経済学者イアン・エアーズです

彼が立ち上げた革新的なウェブサイトstickk.comは決心を貫くのに役立ちます

このサイトの特色は”ムチ”で、誘惑に負けて目先の快楽を味わったら、痛い思いをするようになっています

減量が成功するかどうか賭けたり(エアーズ自身、これは大成功しました)、決めた目標を達成できなかった場合はチャリティーにお金を寄付したりすることによって、目先の報酬に”税金”をかけるわけです(エアーズのおすすめは”不本意なチャリティー”、すなわち自分が支持したくない組織に寄付をすること 失敗の痛手をより大きくするのがねらいです)

そうすると、報酬の価値じたいは変わらなくても痛手が大きくなるので、目先の快楽がたいして魅力的に思えなくなります

アメで言うと記事を更新するたびに反応が得られることかなぁ

そういえば今のところムチとなるペナルティは特に設定してないな

でもペナルティを設定すると『意志が弱い人も強い人も骨抜きにする魔法の言葉』で出てきた「罰則をつくればルール破りが増える」っていうモラル・ライセンシングが起きそうなんだよな

これに引っ掛からないようなペナルティはちょっと今すぐには思い浮かばないから、これも今後の懸案事項にしておこう

まとめ:背水の陣で逃げ道をなくして意志力を高める

「将来の報酬」を意識できるような工夫をしたり、「誘惑にかられた自己」に対する事前の防衛措置を用意しておく必要を感じた

もうひとりの自分を「まったく別の人間で脅威的な敵」だとする考え方はなかなか面白い

読書家の長尾さん
そんなふうに考えると具体的な倒し方や対抗措置をいろいろと思いつくことができそうだ

次回予告:あなた2.0に会う

あなた2.0とはいったい何のことだろう

IT系のイメージで言うとバージョンアップした上位の自分というカンジ

次回の記事でその正体が明らかになるよ

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