意志力の高い仲間をもって、自分の意志力を高める新しい方法
「自分を変える」本の実践記録として、良い習慣を継続して悪い習慣を捨てる連載だよ
意志力を高めるなら、まず意志力の高い友達を作ろう!
「ろくでなしの仲間」にはなりたくない
スタンフォード大学の学生寮を舞台に、大学生の問題行動を減らすべく介入教育実験が行われた
この実験の目的は「学生に大量の飲酒を思いとどまらせる」こと
彼らに無茶な飲酒を控えさせるべく、2種類のチラシが用意された
A:理屈で攻めるタイプ
B:イメージで攻めるタイプ
ひとり酒を飲んでいる男子大学院生の姿が描かれ、そのわきにこんな文句が載っているもの
「スタンフォードの院生は酒飲みが多い……そのほとんどはろくでなし」
「酒を飲むなら慎重に……こんな野郎とまちがえられたら最悪」
ある寮でAのチラシを配布、別の寮でBのチラシを配布して比較実験することになった
2週間後、寮生たちに無記名でアンケートに回答してもらった
アンケートの内容はもちろん「前の週の飲酒量について」
アンケート結果はというと、「院生の同類になるぞ」という内容のBのチラシがそこら中に貼られた寮の学生は、理屈だけ並べ立てたAのチラシが貼られた寮の学生に比べて、飲酒量が50%も下回っていたそうだ
著者は「研究者が後をつけて調査したわけではないので、本当のところは分からない」「無記名のアンケート調査でさえ、ろくでなしの院生みたいに思われるのがイヤで少な目に答えたのかもしれない」と懸念を示したうえで、アンケートの回答が真実であれば、この実験は不健康な行動をやめさせるための新しい戦略を示したことになると評している
「みんなと一緒」だから人は安心できる
仲間がやっていることは「自分もやったほうが賢明だ」と人は判断する
これは心理学者が「ソーシャルプルーフ」と呼んでいるものなんだけど、これを利用して意志力を高めることを望むなら「自制心をもって行動するのはみんなが当たり前にやっていること」だと思わせる必要があるんだ
ところがこのソーシャルプルーフによって、たとえばメディアやインターネットで流れてくるこんな情報によって「よろしくない仲間意識」が目覚めてしまう場合がある
- 40%のアメリカ人は運動をまったくしておらず、積極的な運動を1週間に5回行っている人はたったの11%
- 推奨どおりフルーツや野菜を1日5品目食べている成人は14%にすぎないが、一方で成人1人当たりの砂糖の年間消費量は約50kg
情報を発信する側は何か警鐘を鳴らそうとしているのかもしれないけど、これを聞いて「自分も当てはまるな」と思った人はこう考えてしまう
「ああ、よかった……みんな同じなんだ」ってね
自分も多数派に属していることを知って逆に安心してしまうんだ
だってそうでしょ? 「国民の86%と同じだ」って言われたのに、なんで自分だけ変わる必要があるの?
「自分は普通」はとんでもない勘違い
このソーシャルプルーフには、その人の置かれた環境によっては非常に恐ろしい勘違いをさせてしまうことがある
周りにいる人のせいで、自分自身に対する認識が変わっていってしまうんだ
たとえば国民が全体的に太っていくほど、「自分は痩せている」と感じるようになってしまったりする
医学誌『アーカイブズ・オブ・インターナル・メディスン』による2010年の報告によると、医学的に見て肥満である人々の37%が「自分は肥満ではない」と思っていたそうだ
さらに「肥満になる生涯リスクも低い」と思っていたらしい
周りの誰もが太っているような環境にいれば、たとえ医学的な基準で「肥満」とする度合が変わらなくても、「どの程度を肥満と感じるか」という人間の基準はゆるくなってしまう
「よいことをしたい」と思うより「みんなと同じでいたい」という思いのほうが強い
ある研究では、「他の家庭に比べて電気やガスの使用量が少ないですね」と知らされた世帯では、その後から電気をつけっぱなしにしたり、温度自動調節器(サーモスタット)の設定温度を高くしたりする傾向が見られたらしい
ソーシャルプルーフに関しては、「他の人たちが実際に行っていること」よりも「他の人が行っているだろうと思っている」ことのほうが重要な意味をもつ
たとえば大学生というのは「気付かれないだけでカンニングをしている連中は実際以上に多い」と思っているみたいだ
カンニングをするかしないかという問題において、処罰の重さや見つかることの恐怖はあまり関係がなく「他のみんなもカンニングをしている」と思っているかどうかで決まるらしい
「同級生たちもカンニングをしている」と思うと、正直な学生が多いクラスでも試験中に携帯メールで友だちに答えを教える人が続出したそうだよ
ところで大学に行ってない人にはいまひとつピンとこないエピソードだったと思うので、もうひとつの例を紹介しておこう
みんなもそうだと思うけど「納税申告書でごまかしをやる人は多い」と思っているよね?
すると人は「みんながやっていると自分が思ってること」をマネしたくなるので、そういうイメージがついていると税金をごまかす人は増えてしまうんだ
もちろん「みんながやっている」と思っているからやるのであって、実際はそうじゃないことが分かるとちゃんと自分の行いを正すこともできる
この心理を良いことに応用しているのがコンビニのトイレに貼ってある「いつも清潔に使っていただいてありがとうございます」という張り紙だね
マイクロスコープ:努力するのを「普通」にする
各章で説明するポイントが自分の生活にも当てはまることに気づくための課題、マイクロスコープ
今回は「努力するなんて普通のことでしょ」と考えてみること
自分では変えたいと思っている行動でも、他のみんなもやっていると思うと、ソーシャルプルーフの効果でせっかくの努力が妨げられることがあります
「みんなだって同じことをしているのだから自分だけ変えようなんてがんばる必要ないのかも」なんて思ったことはありませんか?
「あの人だって、この人だってやっているし……」と同じようなことをしている知り合いを数えたりしていませんか?
もしそうなら、そんな考え方でいいのかどうか、疑ってみたほうがよいでしょう
いちばんいいのは、あなたができるようになりたいと思っていることを習慣にしている人たちに出会うことです
あなたが見習いたくなるような新しい”仲間”を見つけましょう
支援活動グループや教室、地元のクラブ活動、オンラインのコミュニティなどに参加するのもよいでしょうし、あなたの目標に役立つような雑誌を購読するのでもかまいません
同じ目標を目指す仲間に囲まれていれば、努力するのがふつうに思えてくるでしょう
Twitterで繋がっている人たちは2,000人くらいいるけれど、その中で僕の意志力を高めるチャレンジ「毎日ブログを更新している」と同じことをやっている人は意外と多いように感じる
(こういうとき気をつけたいのは、「みんなできてるのに自分はできてない」という風に意志力の問題を善悪の問題にしてしまって、モラル・ライセンシングが発動してしまうことだ)
実はTwitterでこうした仲間を作って意志力を高める人というのは結構いる
読書垢・勉強垢・ダイエット垢など、何か習慣化したいことの専用アカウントを作成して、同じ目標を目指す人たちとの繋がりを築いているみたいだ
そういう意味ではブロガーサロンとかブログ塾に参加して「それが当たり前」という環境に身を置くことで意志力を高めるのもいいかもしれないね
まとめ:同じ目標を目指す「仲間」をつくろう
人は「あんなヤツと同じだと思われたくない」と思っている対象のやっていることはマネしたくないと思ってしまうことを知ることができた
逆に仲間意識をもっている人たちに対しては「同じでありたい」と考えてしまい、良くも悪くも意志力に影響を及ぼすことが分かった
何を「普通」と感じるかについても周りの人に大きく影響を受けて基準が変わってしまう
次回予告:恥はツライが役に立つ
人は他者に認められたい、という基本的な欲求をもっている
逆に言うと「バカにされて恥をかきたくない」ということでもある
次回はこの「恥とプライド」を利用して意志力を高める方法を勉強しよう
記事を書いたらFacebookページやTwitterで更新通知するので、まだフォローしていない人はぜひフォローしてお知らせを受け取ってね