せっかくここまで意志力を高めるトレーニングをしてきたのに、わざと誘惑に負けるなんて正気ですか!?
「自分を変える」本の実践記録として悪い習慣を捨てて良い習慣を継続してきたのに!
1カ月以上この本と向き合って意志力と戦ってきたのに! わざと誘惑に負けないといけないなんて!
「欲しいもの」は反射的に不安を生み出す
何かが欲しくてたまらないとき、脳や体で起きていることを落ち着いて観察すると、報酬の期待によってワクワクするのと同じくらいストレスも感じているのに気づく
ドーパミンってやつは多少のプレッシャーを与えてでも人に幸せを追い求めさせようとしてくるし、その過程で不幸な気分を味わおうがおかまいなしだ
電流の網の上を足が黒コゲになるまで往復したオールズとミルナーの実験用ラットを思い出すよね
報酬システムのアメとムチ
ドーパミンを生み出す脳の報酬システムは、アメとムチ2つの武器を用意している
まず「報酬への期待」がアメだ
ドーパミンを放出する神経物質が喜びを期待したり行動を改革したりする脳の領域に働きかけると、ドーパミンの作用を受けて欲望が生まれる
そして「生きるか死ぬかの一大事のように感じさせる」のがムチだ
脳の報酬センターがドーパミンを放出すると、同時に脳のストレスセンターにも信号が送られる
ドーパミンは脳のこの領域でストレスホルモンの放出を引き起こす
そのせいで欲しいものを期待すればするほど不安がつのり、何がなんでも欲しいものを手に入れたい一心で「生きるか死ぬかの一大事」のように感じてしまうんだ
マイクロスコープ: 欲望のストレスを観察する
今回の課題はマイクロスコープが1つ、そして意志力の実験が1つある
まず最初は、各章で説明するポイントが自分の生活にも当てはまることに気づくための課題、マイクロスコープ
今回のマイクロスコープは「欲望のストレスを観察」すること
欲望を感じているとき、ほとんどの人はいい思いができそうな期待でいっぱいになり、ドーパミンのせいで起きる欲望にはつきものの「実際の嫌な気持ち」はあまり気にとめません
今週は、何かを欲しいと思う気持ちがストレスや不安を生んでいるのに気がつくかどうか注意してみましょう
もしあなたが誘惑に負けたら、それは報酬への期待にそそのかされたせいでしょうか?
それとも、不安を和らげようとしたせいでしょうか?
前のセクションの最後でも書いているけど、セールに対しては「いま買わないと!」という不安を和らげようとしていると思う
何かを欲しいと思う気持ちは、ストレスや不安を間違いなく生んでいるのを感じる
脳内物質に操られて破滅的な行動をし続ける
一心不乱に欲しいものを求め続け、それを手に入れるためなら努力を惜しまず、苦痛さえもいとわない
それほどまでに欲しいものが実際に手に入ったら──きっと幸せになれると思うでしょ?
でもこうやって際限なく追い求めているうちに疲れ切ってしまうんだよね
- 新しいキッチン用品を衝動買い
- お酒のお代わりを注文
- 新しいパートナー
- もっといい仕事
- もっと儲かるノウハウ など
報酬への期待があまりにも強烈すぎるせいで、少しも楽しくないのに欲しいものを求め続けてしまう
すると満足をもたらすどころか、二日酔いしたり太ったり損したり──悲惨な結果を招くものを消費し続けてしまうんだ
もちろんドーパミンの主な働きは報酬を追い求めさせることなので、ストップ信号を出すことなんかありえない
だからたとえその報酬が期待外れだと分かってもやめようとしないんだ
2週間前のポップコーンを黙々と食べ続けた人たち
コーネル大学の食品・商標研究所所長ブライアン・ワンシンクは、この「破滅的な行動をし続ける人たち」に関する面白い実験を行っている
映画館の甘い香りのポップコーンについつい誘われてしまった経験が誰しもあると思う
あの香りでドーパミンを刺激された人たちは、行列してでも買っているし、もちろんドーパミンによって最初のひと口の美味しさを期待しているはずだ
そこでワンシンクは映画の観客に実際に渡すのは2週間前につくっておいたポップコーンという実験を行った
観客たちは「おいしいに決まっている」と思い込んで食べ続けるか?
それともおいしくないのに気付いて食べるのをやめるか?
当然ながら映画の終了後に2週間前のポップコーンを食べた客たちも「ひどい味だった」と言ったそうだよ
ところがどれくらい食べ残しているのか見てみると、なんと作りたてのポップコーンを食べた客と同じように6割ほどの量をパクパクと食べていたらしい
ドーパミンの呪文を解く方法
こういったまやかしの報酬を追い求めた虚しい経験に注意を払うようになると、呪文は解け始める
脳が報酬に期待するものと実際に経験するものを一致させるように仕向けると、次第に脳は期待のほうを調整するようになるそうだ
たとえば大食いで食べすぎが習慣になっている人は、たとえ口いっぱいに食べ物をほおばり、お腹もはち切れそうになっていてもさらに脳が食べ物を要求するようになっている
食べれば食べるほど焦りが生まれ、早食いすぎて口に詰め込んでいるものの味すら感じていないこともある
そして食べ終える頃にはしんどくなって気分も悪くなる
こんな人でも落ち着いて味わいながら食べるように気を付けはじめると、味もそうだし見た目も匂いもおいしく感じるようになってくる
ドーパミンによる「おいしいものを食べる」という期待を、ゆっくり味わって満たすことで実際に経験するものを一致させるってわけだ
研究によると味わって食べる練習をした人は食べ物に関して自制心が強くなるらしい
意志力の実験:快感の誘惑に負けてみる
今回2つ目の課題は、科学的な研究や理論にもとづいて自己コントロールを強化するための実践的な戦略、意志力の実験
今回は「わざと快感の誘惑に負けてみる」ことで自分自身の心の動きを観察してみよう
わざと誘惑に身をさらして、報酬への期待を感じてみましょう
これをすれば楽しい気持ちになれると思い込んでいるせいで、つい負けてしまうような誘惑です
授業でよく出てくる例としては、スナック菓子やショッピング、テレビ、Eメールやポーカーゲーム、ネット上のさまざまな暇つぶしなど、あえてそういうものを楽しむことにします
まず報酬への期待が高まるとどんな感じがするかに注目しましょう
期待や希望を感じたり、興奮したり、あせったり、唾が出たり──脳や体に起きているさまざまな現象を観察します
そのうえで、わざと誘惑に負けてみます
そのとき実際に感じた快感は、期待どおりでしたか? 満足して報酬への期待は消えたでしょうか?
それとも、もっと食べろ、もっと使え、もっとやれ、とあなたをさらに駆り立てるでしょうか?
いつになったら満足するのでしょうか? そもそも満足することなどあるのでしょうか? それとも単にお腹がいっぱいになったり、疲れたり、イライラしたり、時間がなくなったり、もしくは報酬が品切れになったりして、続けられなくなるだけなのでしょうか
このエクササイズを試した人は、大抵が最終的に次の2パターンどちらかに分かれるそうだ
- 楽しいと思っていることを心から味わうようにしたところ、思っていたよりずっと少しの量で満足できることがわかった
- 報酬への期待と実際に得た快感があまりにかけ離れていることがわかり、すっかり幻滅してしまった
どちらにしても以前よりもうまく自分をコントロールできるようになっているんだと思う
それで僕の場合はというと、満足して報酬への期待が消えることはなかった
たぶん「2. 報酬への期待と実際に得た快感があまりにかけ離れていることがわかり、すっかり幻滅してしまった」のほうに該当するんじゃないかな
セール品に飛びついてみたものの、けっこう先に使うことを見越して「今のうちに買っておこう」と思って購入したから実際に買ったものを使ってみてすらない
でも食べ物に関してはお腹いっぱい食べたけど「うーん満足」というくらいで止めることができてることが多いかな
今週1回だけ無理に食べすぎてしまって気分が悪くなったことはあったけどね
そういえば食べ物だと胃の容量に限界があるから最終的に止めることができるんだけど、ゲームは際限なくやってしまったなぁ
何かしらクリアしたら「よしじゃあ次!」とエンドレスで報酬への期待が次々とやってきた
またそのうち色々と試してみることにしよう
欲望がなくなった人間はどうなる?
今回の意志力の実験を通して「欲望に従えば満足を得られる」と勘違いして悲惨な結果を招く場合があることを実感できた
かといって欲望を完全に無くしてしまえばいいんじゃないか──なんて極端な考えになるのはやめたほうがいい
欲望のない人生であれば自制心や意志力を高める苦労も必要ないと思うけど、そんな人生きっとつまらない
実際に欲望のなくなってしまう病気があって、無快感症というんだ
毎日の暮らしに満足を求めることは一切なく、ただ習慣をこなすだけの人生
- 食べる
- 買い物をする
- 人に会う
- セックスする
この人たちも一応こういったことをするにはするんだけど、そこから喜びを得ることは期待していない
喜びを感じないということは次第にそれらに対する気力もなくなっていく
何をしてもいい気分にならないと思ったら、次第にベッドから起きだすのさえつらくなってくるそうだ
うつ病やパーキンソン病は報酬系の異常?
身体がうまく動かなくなったり震えたりするパーキンソン病も脳に異常が出る病気なんだけど、この場合も多くは脳でドーパミンが十分に生成されなくなるので、憂うつで不安定になる
憂うつと言うと「うつ病」を連想する人もいると思うけど、神経科学者たちが考えるうつ病の原因もこういった脳の異常なんだそうだ
報酬システムの機能低下がうつ病を引き起こす生物学的な原因になっていると考えられている
科学者らがうつ病の人々の脳の活動状態を調べたところ、目先の報酬を前にしても報酬システムの活性状態が維持されないことがわかった
多少のやる気は見られても「欲しい」とか「何が何でも手に入れよう」といった強い気持ちは生まれなかったらしい
そのせいで多くのうつ病の患者が経験するように、欲望ややる気を失ってしまうんだ
まとめ:「本当の報酬」と「まやかしの報酬」を見分けよう
現代社会はテクノロジーなしでは成立しないように発達してしまっている
そのため何かを求め続けさせる仕掛けが24時間常にどこかに潜んでいる
でも「期待」だけさせられて実際には満たされなることのない日々を送っている人は少なくない
もしいくらかでも自制心を手にして意志力を高めるようにしたければ、人生に意義を与えてくれるような「本当の報酬」と、分別をなくして依存症になってしまうような「まやかしの報酬」をきちんと区別しないといけない
そのためには手に入れたものをしっかり味わうように心がけよう
まやかしの報酬を追い求めた虚しい経験に注意を払い、脳が報酬に期待するものと実際に経験するものを一致させていくようにして、ドーパミンの呪文を見破っていこう
次回予告:意志力の本を5週間実践した感想
5週間──ついにこの連載も半分が終わって折り返し地点だ
次回は第5章の内容を振り返って、この1週間で第5章を実践してみた感想や気づいたことを書いてみるよ
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