速読と勉強法を用いた書籍読書術の実践と本の書評レビュー

読書家の長尾さん

あなたの意志が弱い理由は罪のライセンスだった

意志力を高める『スタンフォードの自分を変える教室』実践編 連載

あなたの意志が弱い理由は罪のライセンスだった

更新日:

勉強垢のあなたが忙しいのは分かっていますが、この記事の書き出しだけでも読んでみてください…けっして後悔しないはずです

読書家の長尾さん
第16回『スタンフォードの自分を変える教室』の内容を実践していく連載です!

良い習慣を継続して悪い習慣を捨てる、「自分を変える」本を実践しているよ

僕と一緒にこの本を実践して「自分を変える」方法を見つけよう

今日のキーワードは「モラル・ライセンシング」

これを読めばなぜ意志が弱いのか、その理由を知ることができるよ

(※勉強垢:受験勉強などで繋がるために作られたアカウントのこと)

人は「まちがった衝動」を信用する

心理学者ブノワ・モナンとデイル・ミラーの研究によると、人は少し良いことをすると「こんどは自分の好きなように行動してもいいだろう」と思ってしまうことがわかった

この実験では学生たちを2つのグループに分け、それぞれ次の意見に対して「まったく反対」「やや反対」「やや賛成」「まったく賛成」のどれかで評価してもらった

Aグループ

Aグループには、このような意見を評価してもらう

A1. ほとんどの女性はほんとうに頭がよいとはいえない
A2. ほとんどの女性は外で仕事をするよりも家で子どもの世話をするほうが向いている

Bグループ

Bグループには、このような意見を評価してもらった

B1. なかにはほんとうに頭がよいとはいえない女性もいる
B2. なかには外で仕事をするよりも家で個どもの世話をするほうが向いている女性もいる

Aグループの学生たちは「とんでもない意見だ」と反対し、Bグループはもっと中立的な態度を示した

読書家の長尾さん
「なかには例外もある」と言われてしまうと認めざるを得ないよね

でもこの実験の本丸はここじゃない

興味深いのはこの後に行われた「男女数名の候補者の適正を判断する」という実験の結果だ

具体的には、建設や金融など典型的な男性中心の業界の上級職として、それぞれの候補者が適しているかを判断する

するとさっきまで性差別的な意見に強く反対していたはずのAグループの学生たちのほうが、その職種には男性のほうが適していると判断した

ロバート・B・チャルディーニの「影響力の武器」で紹介されている「一貫性の原理」が、ここでは働かなかったということになる

一貫性の原理というのは、自身の行動・発言・態度・信念などに対して一貫したものとしたいと考える心理のことだ

読書家の長尾さん
セールステクニックの「フット・イン・ザ・ドア」や「ローボールテクニック」に利用されている心理状態だよ

なぜこの学生たちには一貫性の原理が働かなかったんだろう

モラル・ライセンシングが意志力の判断を狂わせる

実は善悪の問題に関して言えば、大抵の人は「道徳的に完全でありたい」なんて思っていない

それどころか少し良いことをすると、今度は「自分の好きなように行動してもいいだろう」と思ってしまう

この心理を「モラル・ライセンシング」と呼ぶんだ

人は何か良いことをすると、いい気分になる

そのせいで自分の衝動を信用しがちになってしまって、多くの場合は「悪いことをしたってかまわない」と思ってしまうんだ

このモラル・ライセンシングは、そのせいで”悪いことをしてしまう”だけじゃない

たとえば良いことを求められた時に責任逃れをするようになる

寄付金を求められたとき

A: 自分が以前に気前よく寄付したことを思い出した人たち
B: そのような過去の行いを思い出さなかった人たち

寄付した金額は、BよりもAのほうが6割も低かったんだ

意志力の問題とは善と悪の戦い

モラル化するものは何であれモラル・ライセンシングの格好の餌食になる

たとえばエクササイズした自分に「よし」と褒めて、サボったときに「なんてダメなんだ」とけなしたりする

こうして善悪で判断してしまうと、今日はトレーニングに行っても明日はサボる可能性が高くなる

読書家の長尾さん
「今日ちゃんとやったから明日1日くらいサボってもいいだろう」という心理になってしまうからだね

このモラル・ライセンシングは、第3章で出てきた血糖値とか意志力が低下したせいで起きるわけじゃない

心理学者たちは研究のため、開き直ったかのように気晴らしをする人たちにその理由を尋ねてみた

すると「気晴らしはあえて行っていることであって、自制心が利かなくなったせいではない」という答えが返ってきたんだ

罪悪感も特になくて、それどころか「頑張ってご褒美を手に入れた自分を誇らしく思う」とさえ語ったそうだよ

気晴らしをすることが自分自身の良い行動に対する最高の見返りだと思うようになってしまうと、自分にとって最も大切な目標を忘れて誘惑に負けてしまうんだ

読書家の長尾さん
つまり「悪いこと」だと認識している行為を気晴らしとしてやるようになるので、「トレーニングをサボる」といった意志力のチャレンジを妨げる行為を「悪いこと」だと思ってしまうとヤバいってことだね

しようと考えただけで、した気になってしまう

モラル・ライセンシングは厄介な心理で、実際に良いことをした後でなくても、「良いことをしようと思いついただけ」でも働いてしまう

たとえばこんな研究結果がある

どっちのボランティアを選ぶ?

「ふたつのうちどちらのボランティアをやってみたいか」を尋ねて、被験者を2つのグループに分けた

A: 自分が以前に気前よく寄付したことを思い出した人たち
B: そのような過去の行いを思い出さなかった人たち

寄付した金額は、BよりもAのほうが6割も低かったんだ

この実験のポイントは、「どちらを選ぶか」ではなく「慈善的な行動をすることを考えさせる」ところにある

被験者は実際に参加申し込みをしたわけでもないのに、なぜか自分へのご褒美にデザイナージーンズでも買いたい気分になってしまったそうだ

読書家の長尾さん
良いことをしている自分を想像しただけで、いい気になってしまったらしいね

別の研究でも、チャリティーにお金を寄付しようと考えただけで、自分のために何か買い物をしたくなることがわかっている

もちろん実際には1セントも寄付していないのに──だ

人は正しいことは「したくない」と感じる

人は「自分自身の”よい”行いと、自分が正当化しようとしている”悪い”行いが矛盾しないか」なんて気にもとめない

ただ直観に従っているだけなので、説明を求められでもしない限り、たとえ筋が通っていなくても気にならないんだ

実際のところ自分の判断を正当化できる理屈が見当たらないことすらあるけど、それでも感情にしがみついてしまうのが人間というものなんだ

だから自分に害を及ぼすような行動でも「ご褒美」だと思い込んでしまう

  • ダイエットをやめる
  • 浪費する
  • 禁煙を破る

こういったことを「やりたいこと」「すべきこと」だと信じてしまう

「今日はいいことをして気分がいいな!(実際にはしていない) 今日くらいドカ盛りラーメン食うか!」という心理状態

冷静な状態で考えると破綻した論理だけど、さっき言った通りそんなこと気にしないのが人間だ

そしてある行為を「道徳的に正しいこと」として位置づけると、人はどういうわけか相反する感情を抱くようになる

読書家の長尾さん
ほら、いくら自分のためになることでも、他人からそれを押しつけられるのには抵抗を覚えるでしょ?
  • 勉強しなさい
  • いま何時だと思ってるの
  • あんな男と付き合うのはやめなさい

こんなこと言われると余計に反発したくなっちゃうよね

これは自分で自分に言ってる場合も同じで、正しいことや自己改善を行うために自分自身にルールを課そうとすると、「コントロールされたくない!」と思ってる自分が抗議の声を上げるんだ

「正しいことだからやろう」と思っても続かないのは、こういうワケ

読書家の長尾さん
人は「正しいこと」は「したくない」って感じちゃうんだよね

道徳上の問題にするな

モラル・ライセンシングのワナを避けるには、単に「するのが難しい」だけのことを「道徳上の問題と区別する」のが重要だ

意志力のチャレンジを道徳上の問題として考えてしまうと、人は自己批判に陥りがちになる

たとえば浮気とか人を騙すというのは道徳的に悪いことだけど、別にダイエットをサボったからって道徳的に悪いとは言えないよね

それなのに多くの人はあらゆる種類の自己コントロールを道徳のテストみたいに考えているんだ

  • ○○を食べちゃった!
  • ガチャはしないって誓ったのに!
  • ツイッターにログインしちゃった!

こういった別に道徳的に問題ないことに対して、とんでもなく悪いことをしたみたいに後悔してる人たちがいっぱいいるよ

特に勉強垢の人たちに多い印象だったなぁ

Twitterで「意志が弱い」って検索してみるとすぐ見つけられると思うよ

読書家の長尾さん
たぶん「こんだけ勉強がんばったんだし、今日は気晴らしにちょっとぐらい」の心理なんだろうね

でもこうしてダイエットや貯金、勉強を妨げるようなことを「悪いこと」だと考えてしまうと、頑張った後で気晴らしにやらかしたくなっちゃう

意志力のチャレンジに失敗することと善悪の問題は切り離して考えるようにしよう

マイクロスコープ:自分の「言い訳」を知る

各章で説明するポイントが自分の生活にも当てはまることに気づくための課題、マイクロスコープ

今回のマイクロスコープは自分の「言い訳」を知ること

今週は、意志力のチャレンジにおける失敗や成功について、あなたが自分自身や周りの人にどんな言い訳や説明をしているかを観察してみましょう

意志力のチャレンジで成功すると「よくやった」と自分をほめ、誘惑に負けたりやるべきことを先延ばしにしたりすると「ダメだった」と思っていますか?

「よい」ことをしたのをいいことに、こんどは「悪い」ことをしてもかまわないと思ってしまうことがありますか? それはたわいもないごほうびでしょうか? それとも大事な目標への努力を損なってしまうものでしょうか?

今回の意志力のチャレンジとして設定した「ブログの更新を毎日継続する」に関していえば、マジで書けないときは書けないと割り切っているので、あまり善悪の意識はない

そこそこ時間のかかる作業だから、本業が高稼働状態になっちゃうとどうしても無理な日は出てくるからね

でも以前から何度も失敗してついにノートを開きもしなくなった「日記を書く」に関しては善悪の意識があったと思う

「こんなことも続けられないのか……オレってダメなヤツかもしれないな」とは考えてた気がする

読書家の長尾さん
日記を書いた日は「よし今日はちゃんと書いた!」って気にもなってたなぁ

あーでもよく考えてみるとブログも記事を書き溜めできたときに「いいカンジだ!」って思ったな……

読書家の長尾さん
そんでその後すぐ継続が途切れちゃったんだ……思い出した……

今日までの記事を書き溜めしといたのは本業で手を取られるのがわかってたからだけど、単純に書き溜めで余裕ができただけだったら危なかったかもしれないな……

読書家の長尾さん
なるほどこういう心理なんだな でもこれを知ったから今後は気を付けられるようになるぞ

まとめ:意志が弱い理由はモラル・ライセンシング

人は「良いこと」をしたあとは「悪いこと」をしても構わないという気になってしまうことがわかった

意志力を高めるトレーニングや、意志力を使って達成したい目標のためにやることは、善悪の問題とは切り離して考えないといけない

「やらないことが難しい」ことと「やってはいけないことをやってしまった」ことを混同しないように

読書家の長尾さん
善悪の判断をしてモラル化してしまうと、モラル・ライセンシングの餌食になってしまうので気をつけよう

次回予告:意志が弱いのは「やることリスト」も原因!?

次回も引き続きモラル・ライセンシングがテーマ

やることリストを作ると逆にやる気がなくなるなんて──信じられる?

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