ディズニーランドから個人商店の酒屋まで、数多くの集客で実際に基盤となった考え方
嶋田亘克氏の『ディズニーのすごい集客』では、商品やサービスが提供する”価値”の見出し方や、”価値”を伝えるために著者が実施したマーケティングについて解説されている
著者の実話エピソードに沿ってマーケティングに対する基本的な考え方を学ぶことができるので、これからマーケティングを学ぼうとする人が基本的な心構えを習得するのに最適な一冊だ
自分が提供している価値とは何なのか
”価値”というのは状況とか相手によっていつも形を変える
コンビニで1個100円で売っている豚まんと、行列ができる中華街の専門店が1個400円で売っている豚まん、あなたはどちらのほうが価値があると思うかな?
単に高級というだけで専門店のほうを選んだあなたは不正解
確かに専門店より味で劣るかもしれないけど、コンビニで手軽にあれだけの味の豚まんが食べられるというのは、大変に価値のあることなんだよね
忙しい営業回りの合間にパッと食べたいだけなのに、いちいち行列に並ばないと買えないのであれば、どれだけ美味しくてもその人にとって専門店の豚まんに価値はない
つまり、コンビニの商品にはコンビニの、専門店には専門店の価値があり、相手によったり同じ人でも状況によっていつも形を変えるということなんだ
マーケティングにおいては、この「お客様が求める価値とは何か」を考えることが常に中心になる
誰にでも売ればいいと言うのではなくて、商品やサービスによって提供される価値が必要な人、欲しいと思っている人に対して商品やサービスの存在を知らせてあげるのがマーケティングなんだな
ものすごく当たり前のことだけど改めて大事なことを思い出させてもらえたと思う
消費者心理は思い込みや感覚ではなく、直接聞き出す
自分がお客様の立場になってみる経験こそ事業の価値を理解する近道
たとえば競合の商品を購入したり、サービスを受けたりしてみることで自社の商品サービスに活かせる場合もあると思う
(もちろん自社のサービスを自分で受けてみるのも大切だ)
でも実際のところ、消費者心理は思い込みや感覚ではなく、直接聞き出した方が早くて正確だと著者は語る
僕も同感だ
最近では今まで解析が大変だったデータまで人工知能でパパッと出るようになってきたけど、それにしたって顧客の心理の動き、つまり「なぜ買ってくれたのか」「どこに価値を感じているのか」という理由までは出てこない
「自分の買う理由がここにある」「この商品・サービスは自分の求めているものだ」という印象を与えることができるマーケティングは本当に強い
必要な人に必要なものを売るのがマーケティング
必要な人に必要なものを売るというのが商売の基本で、対価をほんの少しでも上回る価値があればまた買おうとなる
健康食品でよくあるけど、初回お試し価格と言いながら実際は定期購入で、クレジットカードを登録すると通常売価であと3回ほど決済するまで解約できなかったりするよね
(これはいま消費生活センターに相談が多数寄せられていて消費者庁も問題視している)
こんな消費者を騙すような手法を使うと嫌われてしまうのは当然だけど、ニーズの合わない顧客にしつこく販促してしまう場合も同様だ
ニーズが合わないのに優良誤認させて無理に買わせてしまうと、対価を上回る価値を感じてもらうことはできないからね
自分が消費者側になったときのことを想像してみればすぐ分かるけれど、一度ダメだと思った会社や店のことは本当によく覚えているものだよ
顧客ニーズと合わないことをわかりながら新開発の商品を必要以上に販促した結果、それまで好調だったコア商品まで売れなくなってしまった実例もあるので、くれぐれも消費者を騙して優良誤認させるような手法はとらないようにすること
こういった手法ではその場その場で売ることができてもファンとなる顧客を獲得することはできないため、いつまでたっても集客が苦しい状態から抜け出せなくなる
マーケティングに失敗するのは”価値”を明確にできていないから
この本の冒頭で、駆け出しの頃の著者が”価値”を明確にできていないために大失敗したエピーソードが掲載されている
手早くまとめて言うと「安ければ来るだろう」「こんなに安いディズニーツアーは他にないぞ」という思い込みによって、なんと受注3件に終わったという衝撃的なエピソードだ
一般的なマーケティングの常識では失敗するはずがなかったそのツアーがなぜ失敗したのか
それは”価値”についての基本的な考え方や、ここまで紹介してきたマーケティングの本質を知ることで分かるようになる
これからマーケティングに携わる人に、ぜひ読んでほしい一冊だった
3秒で見返す! 本書のポイント
- 自分が提供している「価値」とは何なのか
- 消費者心理は思い込みや感覚ではなく、聞き出す
- 消費者をだますような手法やニーズの合わない顧客にしつこく販促すると嫌われる
1分でわかる! 本書の要約
- 価値は状況や相手によっていつも形を変える
- 不変の価値とは、いつ誰と行っても提供される価値であり、まさにディズニーの本質であるハピネスそのもの
- 自分がお客様の立場になってみる経験こそ事業の価値を理解する近道
- 事業の目的や価値が明確になると次に自社の商品やサービスのターゲットを明確にしていかなくてはいけない
- 思い込みや感覚でターゲットを決めてはならない
- お金や規模で勝る相手にさえも、知恵で勝てる策を生むことができる
- すでにある需要を拡大する方法、現状は明らかに少ないターゲットを取り込むことで純増を生む方法
- 継続的に現象している需要を見落とさない そしてそれを他のターゲットと同じように扱わない
- 商品というのは物理的には商品単体のことを指すものの、集客という観点で見るときには、商品を通して提供される価値こそが重要
- 直接的な質問をぶつけ過ぎると希望も入ってきて、本質の見極めが難しくなる場合がある
- 消費者自身の過去の競合での成功体験や失敗体験を聞き出すことほど簡単に消費者心理を知るテクニックはない
- 初めて買う人を増やしたければ購入意欲を上げる優位性を高めるか価格でお得感を出す
- ディズニーのテーマパークの場合来園前からリピートしなければならない仕組みが既に作られている
- お客様というのは一度ダメだと思った会社や店のことを本当によく覚えている
- 普遍的なテーマや価値をベースに訴求が出来ればたとえ今年の集客に繋がらなくても決して無駄にはならない
- 確実に満足していただける商品やサービスでない可能性があれば集客する意味がない
- 気になったことや改善すべき点などありましたらご記入くださいと書いてしまうと本当にクレームばかり書かれてしまう
次回予告
基本的な心構えが分かったら、次に気になるのは具体的な手法だよね?
「顧客に価値を聞くって言ってもどうやるんだよ……」と思わなかったかな?
そんな人のために、次回は中小企業や個人事業主でも実践できる消費者心理を分析して広告宣伝に活かす方法が書かれた本を紹介するよ
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