あなたにとって99%悪いものを売りつけようとする人たちに、あなたは喜んで引っかかってしまうのです
「自分を変える」本を実践して、良い習慣を継続して悪い習慣を捨ててしまおう
今日のキーワードは「意志を骨抜きにする魔法の言葉」
モラル・ライセンシング最後のワナがその姿を現すよ
後光効果(ハロー効果)が「罪」を「美徳」に見せかける
最後のワナは行為の良い悪いとは関係のないところに潜んでいる
「自分が欲しがるものは悪いものではないに違いない」と思いたがる密かな願望に関わるものだ
ちなみに後光効果(ハロー効果・ハローエフェクト)ってどんなものか知っているかな?
社会心理学の現象で、ある対象を評価する際に目立つ特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められてしまうことなんだ
たとえば「有名出版社が発行している雑誌に載っている情報なんだから正しいはずだ」と思い込んでしまったりするよね
健康ハロー効果
ダイエットをしている人たちは、このハロー効果に最も引っかかりやすい
メインディッシュにヘルシーなものを選んだ人の多くはそのせいでいい気分になり、飲み物・副菜・デザートは逆に太りやすいものを注文する傾向がある
チーズバーガーと一緒にグリーンサラダを注文すれば、チーズバーガーだけ注文した場合に比べて総カロリーが減ると勘違いしてしまう人が多いこともわかっている
もちろん良いことをした気分になってもハロー効果は発生する
- チャリティーの募金つきチョコレートを買った人 → いつもよりチョコレートを多く食べすぎる
- バーゲンで目玉商品をゲットした人 → ものすごく得をした気分になって、つい買いすぎる
- 誰かのためにプレゼントをした人 → いいことをした気分になって自分にも何か買ってあげたくなる
意志を骨抜きにする「魔法の言葉」
モラル・ライセンシングが厄介なのは、食べ物にせよ他の物にせよ「いい」「悪い」で判断すると、いい気分になったせいで常識が吹っ飛んでしまうことだ
レストランやマーケティング担当者はそこにつけ込み、99%悪いものにたった1%のいいところをくっつける
その「1%のいいところ」を表すのが魔法の言葉だ
魔法の言葉によって1%の良い一面だけを見てハロー効果が発生してしまうと、まんまとその手に引っかかって、長期的な目標に反するにもかかわらず、いいことをしたような気分になってしまう
長期的な目標をめぐって常日頃から葛藤を繰り返している人は、たとえ見えすいたトリックだとしてもむしろ喜んで引っかかってしまうんだ
グリーン・エコ効果
オーガニックのものを食べるのは、健康によいだけではなく地球のためにもなるという考えをしてしまうことを著者は「グリーン・エコ効果」と呼んでいる
たとえば1992年にアメリカで起きたSnackWellsというクッキーの大流行はこの典型的な例だ
このクッキーのパッケージには「FAT FREE」(脂肪ゼロ/無脂肪)と書かれているんだけど、これが魔法の言葉
魔法の言葉によるハロー効果にだまされて、この糖分の塊のようなお菓子を平らげて体重が増えた人たちが続出したらしい(ちなみに著者もそのうちの1人なんだそうだ)
最近の研究を見ても魔法の言葉が新しいものにすり替わっただけだということはよくわかる
最近よく見る魔法の言葉は「オーガニック」だ
研究によるとオーガニックという表示のついたオレオは、ふつうのオレオよりもカロリーが少ないように感じて、毎日食べても大丈夫だと思ってしまうらしい
こんなふうに何かを「いい」と思ってそれにこだわってばかりいると、正しい判断ができなくなる
マイクロスコープ:誘惑の「キーワード」を見つける
各章で説明するポイントが自分の生活にも当てはまることに気づくための課題、マイクロスコープ
今回のマイクロスコープは誘惑の「キーワード」を見つけること
自分の好きな物のいい面にだけ注目して買いすぎたりしていませんか?
あなたがつい惑わされてしまうキャッチフレーズはありますか?
たとえば「1点買えばもう1点無料」「天然100パーセント」「フェアトレード」「オーガニック」「チャリティー」など
今週は「魔法の言葉」が目標の邪魔になっていないか、注意してみましょう
実は「魔法の言葉」に釣られてよく買ってるものがあるんだよね
だってさ!だってさ!「カロリーゼロ」「糖類ゼロ」な上に「機能性表示食品」だから「食事の脂肪や糖分の吸収を抑える」んだよ!
エコ活動が罪悪感を鈍らせる
環境にやさしい行為──身近な例でいえばエコバッグなんかがそれだ
こういった環境にやさしい行為でもモラル・ライセンシングが働くらしい
充電式の乾電池とか、オーガニックのヨーグルトなんかのエコ商品を販売するWebサイトをながめているだけでも、善いことをしているような気分になってしまうそうだよ
この研究では、そういった環境にやさしい商品の購入者に、正解するごとにお金がもらえるテストを受けてもらった
するとまあカンニングする傾向が見られるわ、正解した分のお金を封筒から取る際に多めにちょろまかそうとする人が多いわ、どえらい結果に
イェール大学の経済学者マシュー・J・コッチェンがこれに関連する懸念を提起している
環境にやさしい小さな活動は、消費者や企業の罪悪感を鈍らせてしまって、かえって害をもたらす行為につながるのではないか──というのがその内容
たしかに環境問題に関心があっても、そのためにライフスタイルを大幅に変えるのは大変なことだ
そこで「少なくとも自分のやるべきことはやった(だからもうこの問題については考えなくていい!)」と思えるようなものがあれば、すぐ飛びついてしまう
こうして罪悪感や心配がなくなれば、晴れ晴れとしてもとのムダの多い暮らしに戻っていけるってワケ
具体例を挙げるとこんなカンジ
- エコバッグを持参したせいで、つい要らないものまで買ってしまう
- 南米の植樹プロジェクトに貢献するのだからと、ファーストクラスで旅行する
- 節電タイプの電球を使うのだからと、電気を大量に消費する
罰則をつくればルール破りが増える
メルボルン大学の経済学者らの発見によると、ライセンシング効果が最も生じやすいのは、悪い行いに対して「罪滅ぼし」のためにお金を払う場合だそうだ
これは結構有名な話なので知っている人も多いんじゃないかな
電力に関連して負担金をとると…
環境に悪いことをしているという意識が薄れてしまって、その結果「さらにエネルギーを消費してもかまわない」と思いがちになった
保育延滞料で罰金をとると…
するとかえってお迎えに遅れる保護者の数が増えた
時間に遅れる権利をお金で買ったつもりになって、遅れても悪いと感じなくなってしまったんだ
ところが環境に悪いものをやめて環境に良いものを手に入れるためにお金を払う、といった場合にはライセンシング効果はまったく見られなかった
たとえば自然エネルギーを使用するために電気代を10%多く支払うような場合には、「さらにエネルギーを消費してもかまわない」とは思わないそうだ
こういった人達の場合は「私は環境問題に関心のある人間だ」というアイデンティティを抱いていて、他のことにおいても自分の価値観や目標にふさわしい生き方をしようとする
ロバート・B・チャルディーニの「影響力の武器」に出てくる「一貫性の原理」によるものだね
自分は正しいことをしたい人間だと考えよう
自分は本当は悪いことがしたい人間なんだと考えていると、何かいいことをしたときに「ご褒美」をあげたくなる
自分を甘やかす悪いことがご褒美だと考えていると、自制心を発揮することが「罰則」のように感じてしまうようになる
そしてモラル・ライセンシングのワナにはまって、何の努力もしていないのに「ご褒美」をもらって喜ぶようなマネをしてしまう──「あなたの意志が弱い理由は罪のライセンスだった」以降を読んできたあなたならよく知っているはずだね
「自分自身の価値観に従って生きていきたい」としっかり自覚すれば、衝動的・怠け者・誘惑に負けやすい自分を本当の自分だなんて思わなくなれる
軸がぶれないようにするには、長期的な目標を常に意識して、善いことをしてもハロー効果で目がくらまないようにすることが重要だ
まとめ:モラル・ライセンシングは意識すれば怖くない
何か「善いこと」をしただけで発動してしまうモラル・ライセンシングだけど、それを知っていれば「あ、いま善いことをしたからご褒美に自分を甘やかしたくなってるな」と気付くことができる
何も知らなければ「んがー!もう辛抱たまらん!」ってなっちゃうけど、もう僕たちは知ってしまっている
「待て あわてるな これはモラル・ライセンシングの罠だ」と気付いた時点で自制心を働かせることができるはずだ
次回予告:意志力の本を4週間実践した感想
4週間ということは、もう1カ月も平日に毎日この連載記事を更新してきたんだなあ
──っとこういうふうに進歩を考えてしまうのがモラル・ライセンシングのワナだった 危ない危ない
次回は第4章の内容を振り返って、この1週間で第4章を実践してみた感想や気づいたことを書いてみるよ
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